哀れな日本の労働者!もっと惨めな米国の労働者。

 縁あって色々な会社の労働者の作業実態を見ています。転職も数回したので特定の業種については、その実態について比較的詳しく分っています。それらの経験から分ったのは、日本の労働者の多くは、まだまだ劣悪な労働条件下で働いているということです。

 幾つか例を挙げてみましょう。
 まず、比較的長期間出入りした製鉄関係。昔に比べればかなり改善されたとは言え、未だに薄暗い巨大な建屋の中で粉塵と汗にまみれながら、一歩間違えば確実に死亡事故に繋がる職場が何と多いことか。その為、昔、日本鋼管は“命の交換”と呼ばれていたし、最近でも八幡製鉄所で溶鋼の入った取鍋を転倒させて死亡事故が発生している。老朽化した設備では床が抜けて転落死亡事故も全国の製鉄所で時々発生している。
 製鉄所でも正社員ならまだマシな方。協力会社、特に耐火物整備工場に到っては、本当に昼でも薄暗い幽霊でも出そうな暗さの中で粉塵と騒音の中で仕事をしている。多分、塵肺患者とか未だに発生しているのではないか。粉塵と言えば、不定形耐火物製造工場。それも大手ではなく、中小企業は酷いところがある。暫く見ている間にどんどん粉塵が堆積していく。こんなところで防塵マスクも付けずにいたら、数年で塵肺になるだろう。

 塵肺の患者さんは近所にいました。炭鉱の中で長年粉塵を吸入して、酸素の摂取能力が低下しているのでちょっと動くと動悸息切れが生じます。いつも行動は、そろりそろりで、何度か入退院を繰り返しながら亡くなりました。

 最近、急に注目され始めた石綿(アスベスト)も粉塵問題の一種です。肺に繊維状の石綿が刺さって、中皮腫と言う癌が発生します。平均発症年数が40年位と言うから今から数万から数十万人の患者が発生するのではないでしょうか。

 石綿は古い建築物や船、水道管いたるところに使用されているので、解体時に今後も石綿の飛散が発生する可能性があります。今年、2005年7月1日に石綿障害予防規則が施行されて、石綿を含有する建材を含む建物を解体時する時には石綿の飛散防止処置を施さなければならないのですが、これだけ石綿問題が注目を浴びると解体も大変でしょう。因みに石綿を含有する建材を含む建物の解体は2020〜2040年頃がピークになると言うことなので、今後も多かれ少なかれ、石綿が解体現場から労働者や付近住民の肺の中に吸引され続ける可能性があるのです。この石綿問題は今世紀中続く問題になるのではないでしょうか。

 話が逸れましたが、石綿で中皮腫になって因果関係が特定できるのは、大手企業に勤めていた人間だけでしょう。中小企業に勤めていた人間は、結構、何の保護具も付けずに石綿を吸い放題吸わされて、勤務年数が少なければ因果関係も特定されずに、闇から闇に葬りさられる労働者が多いだろうと思う。

 さてさて、粉塵だけが問題ではない。世の中、綺麗に塗装された製品が多いですが、どうやって塗装しているか、知ってますか? 大半は労働者が一枚一枚手で塗装している物が多いのですよ。自動車のドアミラーとか、空調機器とか、朝から晩までスプレー持って、吹き付けて。塗料にはトルエンとかキシレンとか、有機溶剤を使ったものが多いわけです。一日中、シンナー吸ってるのと同じわけです。まあ、現在では普通、防毒マスク着用している職場が多いので直ぐに体に影響があるわけではないでしょうが、これが日本の労働者の実態ですよ。

 人間が使用している化学物質の種類は、膨大な数に上っているにもかかわらず、その中で安全性が確認されずに使用されているものの数の方が圧倒的に多いのではないでしょうか。そういう意味では今後、第2、第3の石綿問題が発生する可能性があるのです。

 後、酷いのが工場の騒音。自動車の鋳物部品工場なんか、加工から検査までほとんど手作業でやってる。研磨音や製品を投げて鋳物同士がぶつかる甲高い音。それはそれは、凄い騒音で労働者は耳栓を着用しているのだが、確実に難聴になってるだろう。

 さてさて、まとめると私の印象では日本は工業先進国のように言われて、さぞ快適な労働環境で労働者が働いているのかと思ったら、大きな大間違い。オートメーション化など大手の一部の工場でやられていることで大半の労働者は昔ながらの単純手作業が多く、その労働環境もまだまだ劣悪なものが多いということです。製鉄所なんか、まだ性懲りも無く、黄色い煙や炭素の粉塵を出してるじゃないですか。大体、着色した煙なんてろくな物を含んでないですよ。そこで作業してる労働者がいるんだから。大資本の製鉄所にしてこの状態なんだから、いわんや中小企業においては。

 もっと惨めな米国の労働者。なぜか。他の項にも書きましたが、米国の一般労働者は既に男が一人で家族を食わせるだけの給料を貰っていないのです。米国の景気拡大中、労働者の実質賃金は下がり続けていたのです。米国は自由に転職や転居が出来る良い国のように思っている人もいるでしょうが、実態は違うのです。欧米はある意味で身分制社会なので同じような経済力、宗教、人種の人間がコミュニティーを作っている。従って、失業したりして現在の経済力を維持できなくなれば、下のランクのコミュニティーに転落していくしかないのである。米国では、億万長者どもが、自分達の安全を確保する為に金持ちだけの塀に囲まれた町を作っている。即ち、経済力に応じて、彼らは住む町を変わっていくしかないのである。そして、米国の労働者は、総中流家庭から更に下に転落しようとしているのである。

 そう言う米国流競争万能社会にしようとしているのが、小泉であり、竹中平蔵なのである。日本の政治家達の自浄能力の無さは疑う余地が無いが、このどさくさに紛れて更にとんでもない方向に日本を引っ張っていこうとしているのが、小泉なのであるということを認識しなければならない。

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